NPO法人ニュースタート事務局関西

VOICE

生きてるっていう実感

遠いどこかで僕の過去が封印されている.
よく眺めてるとそれはきれいなシャボン玉のように輝き,僕の幼き日々の記憶がモニターのように映し出されている.

あのシャボン玉を割れば僕は自由になれるのか.
皆も持っているシャボン玉.
でも遠くから見ていると割れそうになかった.僕はシャボン玉がある方向とは反対に走った.もう過去は見たくなかった.たしかに過去は輝いていた.シャボン玉は僕を幻惑させる.あの時の偽りの自信がある僕に戻れとでも言うの.
そんなことはもういやだ.虚構の世界の中で生きてきたように僕は何かにとらわれていた.あんな過去によく生きていたよね.過去は変えられない.帰れない.換えられない.瞼に焼きついたあの日の記憶.飛んでしまうのはシャボン玉なのか,今の僕なのか.

地球に来た日は覚えていない.僕は何しに地球に来たのだろう.使命を忘れた堕天使のように,僕は今の現実の中で,孤独な運命を呪った.日本に来たのは何か理由があったのか.
いつも一緒だったおじいさんは口癖のように言っていた.「アカーシャレコードは変えられない.」(アカーシャレコードとは,生きている人間の過去未来が書いてある空想上の記録のことで,そこに書かれている通りにしか人間は動けない運命にある.)僕はそれを読むべきなのか,読まないほうがいいのか.自らの未来を知ったら,僕はただ神の意思で動いているに過ぎないことに気づくのだろうか.

ひきこもっていたのは僕が弱いから,それとも神の意思なのか.あの時あのまま歩いていたら僕はどうなっていただろう.でも,歩けなかった,もう歩かなかった,歩きたくなかった.心の片隅で何かが違うと思いながら日々を過ごし,必死だった,でも何に必死だったのかわからない.ほとんど脅迫的だった.生きていく事に何の役にも立たない事を頭に詰め込んでいた.

君の事なんか見えなかった.自分の事で精一杯,息をするのも苦しかった.助けて,助けて,助けて,と叫びたかったのに叫び方がわからなかった.僕は止まれなかったんだ.みんなも止まれなかったんだね.

でも結局止まったんだよ.そしたら周りが見えてきた.とらわれていたものが取れたんだよ.そして君に出会えた.

君は僕より前に止まっていて,ずっと僕を見てたんだね.僕を待ってたんだね.やっとわかったよ,なんで君の笑顔が,しぐさがそんなにうらやましく映ったのかを.

神様ありがとう.あの子に会うために僕はひきこもってたんだね.苦しかったよ,泣きたかったよ,叫びたかったよ.でも,今はあの子,そしてみんなに会えた.前から会ってたのかもしれない.でも目を見てなかった,話せなかった,声が聞こえてなかったんだ.

今でもよく過去にとらわれる.歩かないとだめだとか思うよ.でも,みんなの顔が見れたから,みんなの声が聞こえたから,僕は昔より強くなった気がする.

お父さん,お母さん,僕を産んでくれてありがとう.昔は「なんで僕をこの世に産んだんだ.」って責めたよね.でも今は本当にそう思えてるんだ.

ユンゲスト