NPO法人ニュースタート事務局関西

VOICE

「元引きこもり」だった僕から、引きこもりの子を抱えていらっしゃる親御さんへ

先日の例会を終えて,発言しなかったぶんずっと考えていたことをここで皆さんにお届けします.

あくまで「元引きこもり」だった僕から,引きこもりの子を抱えていらっしゃる親御さんへのことばです.

ちなみに言うと,僕の場合は父:事務系公務員,母:自営音楽教師,兄:国立大卒教諭という環境でした.
まさに公務員家族.当然の如く望まれる職は「公務員」.何だっていい,とりあえず「公務員になれ」が合言葉でした.

でも実際は受験戦争で勝ち残れなかった人間.その過大な期待に応えられなかったことと,それについての争いなどから引きこもりになり,毎日思うことは「親が悪い」ということでした.

でもそんな俺でも,今はバイトとは言えどそれなりの社会的地位を戴いているし,「音楽」と言う最高の夢と目標と宝を持っています.

引きこもりから立ち直ったのには,周囲の友人や人間に恵まれたという「運」の強さもあると思うけど,先日の例会でたくさんの親御さんの話を聞くうちに,恨みを持っていた親に対してある意味感謝の気持ちを抱くようになりました.

それは親が俺をしっかり引きこもらないように導いてくれた,ということがわかったからです.

俺が引きこもっていた時期は二回.高校卒業後から通信大学入るまでの二ヶ月と,去年の半年間の無職時代.ともに期間は短いとはいえ,親に恨み(私立大学に行かす金がないといわれ,一般の大学にいけなかったことと,それによる学歴差別のコンプレックス)を持っていたし,人間不信にもなっていた.

それでも最終的には社会活動に復帰していくんですが,それには俺に対する親からの影の(無言の)叱咤があったからなんです.

例えば,高校を卒業したとき.心理学や法律の勉強をしたいのに親の考えによって私立に行けなくなって(他にも恋人との別れや友人との別れなどもあり)一ヶ月自室に篭っていた俺に「通信大学」の案内を持ってきたのは母.
「勉強したいならこれなら学費も安い」と言われ,渋々やることに.

また元来音楽好きの俺を刺激するように安物のギターも与えてくれた.

でもこれが一つの技でした.

通信は「自分が勉強しなければ単位取得も進学もできない」という厳しいもの.そうなると自然と自分のヤル気と努力が要求されるし,わからないことを解決するには参考書などが必要となる.またリポート提出が基本であるため,そのための用紙も毎回購入しなければならない.

そういう環境に俺を敢えて放り込むことで,外に出る一つのキッカケを与えてくれたのだと思う.

そしてギター.

弾くためには,また上手くなるためには練習と勉強しかない.
またギターはエレキだったため,キレイな音をだすためには色々機材を揃えなければいけない.消耗品である「弦」もすぐに切れる.

そうなると「お金」がどうしても必要になる.

でも親はそこまで(ギターと入学)は与えても,それ以上はほぼ与えてくれなかった.

それは「欲しいものがあるならば自分で手に入れろ」という親からの無言の叱咤だったのです.

じゃあ「欲しいもの」を手に入れるためにはどうすればいいか?

「働く」しかないんですよね.

そうわかった俺は知らぬ間に自分からバイトを見つけ,気がつけばその引きこもりも忘れ,社会復帰してました.

また去年の無職のときでも,基本的には収入のない俺に食事は与えるが夕食のみ,昼食や遊びの為の金は全く与えなかった.

それは「無職でも何とか道を見つけろ」という叱咤だったのです.

高校時代は王将でバイトして料理を教わったりして,なにぶん元料理人だったので,ある程度の材料があれば自分の食事は作れるんだけども,その材料も敢えて与えるのではなく買いに行かせるようにしていた.そうすることによって社会との接点を残してくれていたんだと思います.

またモノを発展させたり改造させたり,はては新しいもの好きの俺の性格を知っているのか,敢えて余分な金を与えることなく「欲しいものがあれば自分で稼ぎなさい」といわんばかりに冷たかった.

でもそれによって「わかったよ!」と反発しながら職探しをするようになっていた.

最期は「早く○○がほしいから仕事をしよう」と思って職探しをし,結果今は自分のやりたいことのためにお金を稼ぐことは何一つ疑問のない過程となっています.

だいぶ長くなりましたが,これが俺の引きこもりから立ち直った一つの家族的要因です.

そして先日の例会でみなさんの話を聞いて,引きこもり経験者として幾つか思ったことがあったので,アドバイス代わりにここで発言したいと思います.

1:過保護になるな.
  確かに仕事もしていないのだから収入もないし,ご飯も食べれなければ欲しいモノも買えない.
  だからと言って何でもかんでも与えてはダメです.
  ある程度(最低限)のものは与えてあげるべきです.でもそれ以上(例えばパンは与えてもジャムやバターは与えない)は自分で手に入れないといけないという風にする.タダ単に買い物に行かせるでもいいし,お金が必要ならば自分で稼がなければいけないという基礎をもう一度わからせるためにも,ここは仏の顔と鬼の顔をもつべきだと思います.
  その意識をまず抱かせることが社会復帰のための第一歩だと思います.

2:「〜でもいい」はダメ.
   お子さんが社会復帰しようとしたとき,すぐに社員になれることは難しいと思いますし,まずはバイトからになると思います.
  でもそこで「バイトでもいいから」という言い方はダメです.
  その発言は「バイト」という社会復帰のための職業は,社員以下であると言っているのと同じです.
  そうなると過大な期待を無言で与えていることになり,結果的にうまくいかなった場合,また「親御さんが悪い」という気持ちを抱いたりもします
  またバイトと社員を区別するのと同じように,例えば会社(学校でも同じです)の甲乙をつけたり,やりたいことが見つかったけどそれが夢物語のようなことであっても絶対に否定しないでください.
  せっかく自分で見つけた「やりたいこと」なんですから,それを馬鹿にしたり批判するっていうのはイコール「もう一度引きこもりなさい」と言っているようなものです.
 
3:やりたいこと
  お子さんが「やりたいことが見つからない」と言っている場合,一つのヒントとしてこの言葉を投げてください.
  「自分がやってて楽しいことは何?」と.
  やってて楽しいことをやる.それが「やりたいこと」の基本なんです.
  やりたくないことをやっていても楽しくないのは当たり前です.やりたくないんだから.
  そしてその「やってて楽しいこと」に関わるような仕事を見つけたり探すようにすればいいのです.
  ゲーム好きならゲームセンターやファミコンショップ,みたいな感じで.
  僕はそうやって仕事を探すようにしてます.
 
以上です.あくまで引きこもりからの観点でしかないかもしれませんが,何か一つのヒントとなってくれれば幸いです.

jun